年の途中で退職し、年末調整を受けていない。そんな人は、確定申告で納め過ぎの所得税が戻る場合があります。ただし、退職後の確定申告は全員に同じ義務があるわけではなく、申告すれば必ず還付金が出るわけでもありません。
社畜のように働いていた間は会社任せだった税の手続きも、退職後は自分で確認する場面が増えます。まず再就職と年末調整の有無、給与以外の所得を整理し、申告義務がある場合と還付を受ける場合を分けましょう。この記事では、必要書類、社会保険料などの控除、提出後の確認まで、給与所得者の中途退職を中心に解説します。
- 再就職と年末調整から申告を考える順番
- 還付申告の5年間と申告義務の期限の違い
- 源泉徴収票と退職後に支払った保険料の整理
- 退職金とふるさと納税を申告する際の注意点
退職後の確定申告を社畜が判断する基準

確定申告は、1月1日から12月31日までの所得と税額を計算し、すでに源泉徴収された税などとの差を精算する手続きです。退職した月までの給与だけを見るのではなく、同じ年の再就職先の給与や、それ以外の所得も整理します。申告する対象の年と、手続きをする年を取り違えないことから始めましょう。
年末調整を受けたかを確認する
給与から毎月差し引かれる所得税は、年間の税額そのものではありません。会社の年末調整で過不足を精算しますが、年の途中で退職したまま再就職しないと、年末調整を受けられず、納め過ぎが残る場合があります。給与が途中で止まった人が還付を確認する理由はここにあります。
同じ年に再就職した場合は、原則として前職の給与も含めて新しい勤務先で年末調整をします。ただし、再就職した事実だけで完了しているとは限りません。前職の源泉徴収票を渡したか、新しい会社で前職分まで合算したかを確認してください。
退職の時期や事情によっては、退職した会社で年末調整の対象になっている場合もあります。「退職したのだから絶対に未調整」と決めず、源泉徴収票の記載や勤務先への確認で実際の処理を把握しましょう。給与明細で何となく税金が戻ったように見えるだけでは、年間の処理まで分かりません。
確認する内容は、前職分を含めた年末調整が済んでいるか、その年に他の給与や所得があるか、追加したい控除があるかです。この三つを整理すると、会社での精算で足りるのか、自分で申告を考える必要があるのかを分けやすくなります。
基本は国税庁の中途退職で年末調整を受けていないときの案内で確認できます。無職になったことだけで判断せず、その年全体の給与と手続きの状況を見てください。
例えば、9月に退職して年末まで再就職していない人は、前職で年末調整が行われたかを確認し、未調整なら年間の所得と控除から還付の有無を調べる順になります。一方、11月に再就職した人は、まず新しい会社が前職分を含めて年末調整したかを確認します。退職月だけで還付額が決まるわけではありません。
12月の給与支給後に退職した場合などは、国税庁の年末調整の対象者の説明も確認してください。自分で申告書を作り始める前に、勤務先で済んだ処理と残っている処理を切り分けると、二重の入力や確認漏れを減らせます。
申告義務と還付の確認を分ける

確定申告をしなければならない場合と、義務はないものの納め過ぎの税を取り戻すために申告する場合は、分けて考えます。年末調整を受けていないという事情だけで、全員が必ず申告義務のある人になるわけではありません。反対に、退職後に給与がないから申告不要と即断するのも避けたいところです。
給与以外の所得がある、複数の勤務先から給与を受けた、退職後に事業を始めたなどの場合は、所得の種類と金額、源泉徴収や控除の状況を含めた確認が必要です。副業についてよく見る一定額の基準も条件付きの話なので、「少額ならどんな申告でも無視してよい」と考えないでください。
特に還付申告をする場合は、申告不要の取り扱いがある所得についても、その申告に含める必要がないか確認します。医療費や保険料の控除だけを追加し、他の所得を抜いたまま提出するのは避けましょう。不動産や株式、事業などが関係するときは、税務署や税理士へ資料を示して確認する方が確実です。
また、還付は、すでに源泉徴収や予定納税で納めた税がある場合の精算です。源泉徴収税額が0円で、ほかにも納付済みの所得税がないなら、控除が増えたからといって所得税の還付が発生するわけではありません。控除額と現金で戻る金額を同じものと考えないことが大切です。
申告義務の一般的な説明は国税庁の確定申告の案内で確認できます。「申告すると得か」より先に「自分はどの手続きに当たるか」を調べると、期限と準備の優先順位が見えます。
還付申告の5年間を取り違えない

確定申告の義務がない人が行う還付申告は、原則として対象となる年の翌年1月1日から5年間提出できます。通常の確定申告期間が始まるまで必ず待たなければならないわけではありません。必要資料と対象年分の作成環境が整ったら、早めに準備することができます。
一方、申告と納税の義務がある場合の期限は、原則として翌年3月15日です。提出期間は原則として翌年2月16日から3月15日で、実際の年の日程は休日なども関係するため、対象年分の国税庁の案内で確認してください。「退職者は5年待ってもよい」という共通ルールではありません。
還付が出る申告であっても、法定期限までの提出が適用条件となる特例などがあります。副業や事業をしている人が、還付という結果だけを見て期限を遅らせることは避けてください。自分の所得と利用する制度を含めて、いつまでの提出が必要かを確かめます。
期限の違いは国税庁の還付申告の説明で確認できます。過去の年分を申告するときは、何年の所得なのか、以前に同じ年分を提出していないかも先に調べましょう。提出済みの場合は、初めての申告とは別の訂正手続きになることがあります。
給与を受け取った年と、源泉徴収票を手元に受け取った年が違うこともあります。例えば翌年1月に書類が届いても、その書類が前年分なら前年の申告に使います。資料の表題にある年分を見て、古い年の資料を一緒に入力しないようにしてください。
給与・退職金・失業給付を分ける
会社から受け取ったお金でも、通常の給与と退職金は税の計算方法が異なります。退職金は原則としてほかの所得と分離して計算されるため、給与の源泉徴収票へ足して一つの給与収入として入力しないでください。退職所得の源泉徴収票などを別に用意します。
退職金の支払者へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合、原則として退職所得に関する税の精算は源泉徴収で済みます。ただし、医療費控除や寄附金控除などのために確定申告書を提出する場合は、退職所得の金額も記載する必要があります。「退職金だけなら申告不要」と「自分が申告するときに記載不要」は違います。
退職金の取り扱いは国税庁の退職金を受け取ったときの案内を確認してください。複数の退職金や確定拠出年金の一時金などが関係する場合は、一般的な計算例だけで処理を決めず、受給時期と書類をそろえて相談しましょう。
雇用保険の基本手当は非課税で、給与収入として申告するものではありません。ただし、退職前の給与や退職後のアルバイトなどは別に確認が必要です。「失業給付だけは非課税」という話を、退職した年のほかの収入まで全て非課税になると広げないようにしましょう。
基本手当については厚生労働省の基本手当・再就職手当のQ&Aでも確認できます。家計に入ってきた金額を全て一つに合計する前に、それぞれ何の支払いかを分類することが大切です。
退職後の確定申告の準備と提出手順

手続きは、所得の資料をそろえる、控除を確認する、対象年分の申告書を作る、送信または提出する、受付と納付・還付を確認する、という順で進めます。税務署へ持っていく資料と、申告書に添付する書類は同じとは限らないので、提出方法に対応した案内を読みましょう。
源泉徴収票と支払い資料をそろえる
源泉徴収票では、対象年分、支払者、支払金額、源泉徴収税額、年末調整や控除に関係する記載を確認します。手取り額を給与収入として入力しないようにしてください。口座へ振り込まれた金額は、給与から税や保険料などが差し引かれた後の金額です。
同じ年に勤務先が複数あった場合は、各社分がそろっているか確認します。ただし、再就職先の年末調整で前職分が合算されている場合は、前職分をもう一度足して二重計上しないことが重要です。摘要欄の記載などで合算の有無を確認し、分からなければ勤務先へ問い合わせます。
| 整理するもの | 確認する資料 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 給与 | 対象年分の源泉徴収票 | 前職分の二重計上や勤務先の漏れ |
| 退職金 | 退職所得の源泉徴収票など | 給与と同じ欄に足さない |
| 社会保険料 | 控除証明書、納付額の資料など | 給与天引き分と自己納付分の重複 |
| 保険料や寄附 | 控除証明書、寄附金の証明書など | 対象年分と支払者を確認 |
| 本人と口座 | 本人確認に使う資料、本人名義の口座情報 | 番号や名義の入力間違い |
源泉徴収票がない場合は、まず会社に発行や再発行を依頼します。退職から時間がたっても見つからないなら、退職後に源泉徴収票をもらえないときの確認と相談手順を参考にしてください。給与明細の振込額を自己流で足し、源泉徴収票の代わりとして確定させないようにします。
書類がまだ届かないときは、何がないのか、どこへ依頼したか、いつ届く見込みかを分けます。ほかの資料の整理は進められるので、全てがそろうまで何も始めないより、相談が必要な点を先に絞ると効率的です。
退職後の保険料と控除を確認する

退職後に自分で支払った国民年金や国民健康保険の保険料などは、社会保険料控除の確認対象になります。控除は原則として、その年に実際に支払った金額などで考えます。通知書の年間請求額と、年内に納めた金額が必ず同じとは限らない点に注意してください。
給与の源泉徴収票に反映されている天引き分と、退職後に自分で払った分を分けて整理します。同じ保険料を二度入力しないよう、何月に、どの方法で、いくら払ったかを資料で確認しましょう。家族の分を払った場合は、誰が実際に負担したかや、生計の関係も確認が必要です。
取り扱いは国税庁の社会保険料控除の説明で確認できます。国民年金の証明や明細書などの提出の扱いは申告年分・提出方法に応じて確認し、過去の申告の記憶だけで判断しないようにしてください。
ほかにも生命保険料、医療費、寄附金など、該当する控除がないかを確認します。控除の証明書があるから必ずその全額が税金から返る、という意味ではありません。所得から差し引くものと税額から差し引くものを区別し、申告書作成画面の案内に沿って入力します。
ふるさと納税でワンストップ特例を申請していても、確定申告をするなら特例の申請は無効になります。申請済みの分も含めて寄附金控除を計算する必要があるため、寄附した自治体の資料をまとめてください。国税庁のふるさと納税の注意事項で、申告する際の扱いを確認できます。
保険料の通知書は年度単位でも、所得税の申告は原則として1月から12月の年分で整理します。翌年の納付予定分まで、請求書に書いてあるからとまとめて入力しないでください。納付済額の案内や領収資料で年内の支払いを照合し、前納などで扱いが分からなければ確認しましょう。
年金の免除を受けた期間や、まだ払っていない保険料についても、請求額をそのまま自分が支払った金額として控除へ入れないことが大切です。また、国民健康保険税は社会保険料控除の対象に含まれますが、退職後に納めた住民税や所得税まで同じ控除へ足すわけではありません。「退職後に払ったもの」を一つの費用欄へまとめず、支払いの種類を分けてください。
作成コーナーで確認してから提出する

国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って所得や控除を入力できます。最初に作成する年分を選び、給与、退職金、ほかの所得の資料を手元に置いて進めます。退職した年の受付環境がまだ準備されていない時期は、前年分の画面へ無理に入力せず、その年分の案内を待ちましょう。
e-Taxで送信する場合は、利用する端末と本人確認の方法、対応するカード等の準備を確認します。本人確認に必要な暗証番号は公式の画面で扱い、相談のメールへ書き込んだり、第三者に伝えたりしないようにしてください。利用方法に困った場合も、国税庁の案内から確認するのが基本です。
入力後は、給与収入が額面の資料と合っているか、前職分が重複していないか、自己納付の保険料を入れ忘れていないか、退職所得や寄附金が漏れていないかを見直します。還付見込み額が表示されても、入力の誤りがないことを保証するものではありません。
送信前に、氏名、住所、対象年分、還付先の本人名義口座、申告内容の確認用データを見直します。紙で提出する場合も、その方法で必要な本人確認書類や添付書類を確認してください。電子申告と紙提出で、全く同じ資料を同じように添付するとは限りません。
作成途中の保存と提出の完了は別です。画面で申告書ができたことだけを見て終えず、送信または提出まで行い、受付を確認します。途中で作業を中断した場合は、再開用データを安全に保管し、同じ年分を提出済みかどうかを確認してから再開しましょう。
受付と還付・住民税を確認する

e-Taxで送信したら受信通知などを確認し、申告内容と提出を確認できるものを保管します。納税が必要な場合は、提出しただけで支払いも終わるわけではありません。納付方法と期限を別に確認し、還付だけを想定していた人も計算結果を読んでください。
還付になる場合は、処理状況と本人名義の口座を確認します。入金までの日数は申告の時期や内容、不足資料などでも変わるため、見込んだ還付金を直近の家賃や生活費の確定財源にしない方が安心です。税務署から問い合わせが来たら、提出した内容と資料を照合して対応します。
提出後に金額や控除の漏れへ気づいた場合は、申告書を何度も新規提出してよいと自己判断せず、提出時期と誤りの内容に応じた訂正方法を確認します。税額が増えるのか減るのか、申告期限の前か後かによって手続きが異なるためです。
所得税の申告が不要な人でも、住民税の申告や所得の証明に必要な手続きを市区町村で確認する場合があります。雇用保険の基本手当が非課税でも、ほかの所得や証明の目的まで無視してよいわけではありません。所得税は税務署、住民税は自治体という役割を分けましょう。
退職後に届いた住民税の納付書は、所得税の還付申告と別に確認します。還付を待っているから納付期限が自動で延びるわけではありません。支払いが難しい場合は、退職後の住民税が払えない場合の相談方法を確認し、早めに自治体へ相談してください。
退職後の確定申告は年分と資料から

退職後の確定申告で最初に確認するのは、年末調整が済んでいるか、その年にどんな所得があるかです。申告義務と任意の還付申告を分ければ、何をいつまでに用意するかが見えてきます。退職したという事実だけで、義務や還付額を決めつけないようにしましょう。
源泉徴収票、退職金の資料、自分で支払った保険料、該当する控除の資料を対象年分ごとに整理してください。そのうえで国税庁の作成コーナーや税務署の案内を使い、入力内容と提出結果を確認します。複数の所得があったり、過去の申告との関係が分からなかったりする場合は、資料をそろえて相談するのが近道です。
会社任せだった手続きも、一度に全ての税制を理解する必要はありません。自分の年末調整、所得、控除、期限を順に確認し、必要な申告と支払いを進めていきましょう。

