「働かせていただく」という表現を、日頃のビジネスシーンで使っている方は多いのではないでしょうか。しかし、この敬語が本当に正しい使い方なのか、あるいは何か違和感があると感じている方もいるかもしれません。もしかしたら、知らないうちに誤用している可能性もあるのです。
特に、真面目に働くあまり、時に自分を卑下しがちな「社畜」と呼ばれる方々にとって、正しい敬語の使用は、円滑な人間関係を築く上で非常に重要です。今回の記事では、「働かせていただく」という言葉の正しい使い方について、その誤用例も交えながら詳しく解説します。この記事を読み進めることで、あなたのビジネスコミュニケーションがより一層洗練されることを目指します。
- 「働かせていただく」の正しい使用条件を理解できる
- 「働かせていただく」の適切な言い換え表現を知れる
- 二重敬語など、誤った敬語表現を避けられる
- ビジネスシーンでの信頼性を高める方法が分かる
「働かせていただく」は社畜的?正しい敬語の基本

- 「働かせてもらう」は適切な敬語か
- 「働かせていただく」が使える場面とは
- 「働かせていただくことになりました」の用法
- 「今日から働かせていただくことになりました」使う場面
「働かせていただく」という表現は、一見すると非常に丁寧な印象を与えます。しかし、常に適切であるとは限りません。特に、自身を卑下するニュアンスが強く出るため、時には「社畜」という言葉が想起されるほど、過剰な丁寧さとなってしまう可能性もございます。
本来、この表現は、自分が何かをするにあたり、相手からの許可や恩恵を受けている場合に使うのが適切です。そのため、状況によっては不自然な印象を与えてしまう可能性もございます。まずはその基本的な考え方を理解することが重要です。
「働かせてもらう」は適切な敬語か
「働かせてもらう」という表現は、「させる」と「もらう」を組み合わせた動詞に「働く」を付加したものです。そして、「させていただく」は、この「させてもらう」の謙譲語にあたります。謙譲語とは、自分をへりくだることで相手への敬意を示す言葉です。
多くの場合は、「させていただく」は相手に許可を求め、その結果自分が利益を得るという文脈で使われます。例えば、取引先との契約において「貴社で働かせていただくことになりました」といった場合、これは相手の許可を得て、その職場で働くという恩恵を受けることを意味しています。一方で、単に働く事実を伝えるだけであれば、「働きます」といった表現でも十分に丁寧な印象を与えることができます。
「働かせていただく」が使える場面とは

「働かせていただく」を使用できる場面は、主に以下の二つの条件を満たす場合に限られます。一つ目の条件は、その行動に対して相手の許可が必要であることです。例えば、上司に業務内容の変更を願い出る際に「担当業務を変更させていただけますでしょうか」と使うケースが考えられます。二つ目の条件は、その行動によって自分が恩恵を受けることです。この恩恵は、単に許可を得られることだけでなく、その結果として何らかの利益や良い影響があることを指します。
文化審議会答申の「敬語の指針(43p)」においても、「~させていただく」は、自分が行うことを相手に許可を求め、そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われるとされています。(参照:文化庁 敬語の指針)このような基準を踏まえることで、より正確な敬語の使用が可能になります。
「働かせていただくことになりました」の用法

「働かせていただくことになりました」は、新しい職場や部署での勤務が決まった際に用いられる丁寧な表現です。この言い回しは、自身がその場所で働く機会を得たことに対し、相手への感謝と謙虚な姿勢を示すニュアンスを含んでいます。この表現を使用することで、相手に敬意を払いながら、新しい環境での仕事に対する意欲や決意を伝えることができます。
例えば、入社時の挨拶や異動の挨拶などで、「このたび、こちらで働かせていただくことになりました。精一杯努力する所存ですので、よろしくお願いいたします。」といった形で使用されることが多いです。ただし、同僚など許可を必要としない相手に対して「同僚の〇〇さんと働かせていただくことになりました」のように使うのは適切ではありません。この場合は、「同僚の〇〇さんと働くことになりました」と伝えるのが自然です。
「今日から働かせていただくことになりました」使う場面

「今日から働かせていただくことになりました」という表現は、文字通り今日から新しい場所で勤務を開始する際に使われます。これは、特に初日の挨拶や、関係者への業務開始の報告において効果的です。多くの会社では、初日に自己紹介をする場が設けられるかと思います。
このフレーズを使うことで、自分がその場所で働くことになったことへの感謝と、これからの業務への真摯な姿勢を相手に伝えることができます。また、控えめな印象を与えるため、新しい環境での人間関係を円滑にする上で役立つでしょう。そのような際に、「本日より、こちらで働かせていただくことになりました。ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。」のように用いると良いでしょう。
「働かせていただく」を使う際の注意点と代替表現

- 「働かせていただきたい」を志望動機で使う
- 「働かせていただきたく存じます」という表現
- 「働かせていただきありがとうございます」の言い換え
- 「働かせていただきたい」の適切な言い換え
- 「働かせていただく」挨拶での使い方
- 「働かせていただく」に関する理解と実践のまとめ
前述の通り、「働かせていただく」という表現は、場面によっては非常に有効な敬語ですが、誤用や過剰な使用は逆効果となることがあります。特に、二重敬語や、必要以上に回りくどい言い回しは、相手に不自然な印象を与えかねません。
以下では、具体的な注意点と、より自然で適切な代替表現について詳しく解説いたします。これらを理解することで、あなたのビジネスコミュニケーションスキルはさらに向上するでしょう。
「働かせていただきたい」を志望動機で使う
志望動機において「働かせていただきたい」という表現を使用することは、一般的に問題ありません。この表現は、「働かせてもらう」の謙譲語であり、企業側が自分に働く機会を与えることへの許可を求めるニュアンスを含んでいます。
そのため、企業に対する敬意と謙虚な姿勢を示すことができます。例えば、「貴社の企業理念に深く共感し、ぜひ貴社で働かせていただきたいと強く願っております」といった形で使うと、より丁寧で熱意のこもった志望動機として伝わります。ただし、過度にへりくだりすぎると、自信がないように見えてしまう可能性もございます。志望動機の例文は以下の通りです。
「働かせていただきたく存じます」という表現

「働かせていただきたく存じます」は、「働かせていただきたい」よりもさらに丁寧でかしこまった表現です。「存じます」は「思う」の謙譲語であり、目上の人に対して自分の意思を伝える際に使われます。そのため、就職活動における企業への応募や、フォーマルなビジネス文書で強い希望を伝える場合に適しています。
この表現を使うことで、相手に対して最大限の敬意を表し、真剣な姿勢を伝えることができます。例えば、「貴社の一員として貢献させていただきたく、働かせていただきたく存じます」といった形で用いると、より丁寧な印象を与えることができるでしょう。しかし、日常会話で多用すると、かえって堅苦しい印象を与えてしまうため、状況に応じて使い分けが必要です。
「働かせていただきありがとうございます」の言い換え

「働かせていただきありがとうございます」という表現は、すでにその職場で働いていることに対し、感謝の意を伝える際に使われることがあります。しかし、より自然で簡潔な言い換えが存在します。この表現は、すでにその職場で働いていることに対し、感謝の意を伝える際に使われることがあります。
例えば、「この機会をいただき感謝いたします」や、「勤務する機会をいただき、誠にありがとうございます」といった表現も可能です。また、単に「お世話になっております」という挨拶も、日頃の感謝を示す一般的な言い回しです。状況や相手との関係性に応じて、より適切な表現を選ぶことが大切です。特に、毎日顔を合わせる同僚や上司に対しては、簡潔な表現の方が好まれる場合もございます。
「働かせていただきたい」の適切な言い換え

「働かせていただきたい」は丁寧な表現ですが、他の言い換え表現を用いることで、より多様なニュアンスを伝えたり、文章をすっきりとさせたりすることができます。以下にいくつかの適切な言い換え例を挙げます。
元の表現 | 言い換え例 | ニュアンス |
---|---|---|
働かせていただきたい | 貴社で勤務したいです | より直接的で明確な意思 |
働かせていただきたい | 貴社で貢献したいです | 意欲と貢献の意思を強調 |
働かせていただきたい | 貴社で業務に携わりたいです | 具体的な業務への意欲 |
働かせていただきたい | 貴社の一員として尽力したいです | 組織への帰属意識と努力の意思 |
これらの言い換えは、文脈や伝えたい意図に合わせて使い分けることで、より洗練されたビジネスコミュニケーションが可能になります。例えば、具体的な職務内容への関心を示す場合は、「業務に携わりたい」が適しているでしょう。一方で、会社全体への貢献を強調したい場合は、「貢献したい」がより響くかもしれません。
「働かせていただく」挨拶での使い方

新しい職場や部署での挨拶において、「働かせていただく」を使うことは、相手への謙虚な姿勢を示す上で有効です。特に、入社や異動の初日には、この表現を用いることで、円滑な人間関係の構築に役立つことがあります。例えば、「このたび、こちらの部署で働かせていただくことになりました〇〇です。皆様のお力になれるよう精一杯努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。」といった形です。
注意点として、あまりに頻繁に使用しすぎると、かえって回りくどく聞こえたり、自信がない印象を与えたりする可能性もございます。そのため、あくまで「許可を得る」「恩恵を受ける」という前提がある場合に、効果的に使用することが重要です。自己紹介の場以外では、「働きます」や「勤務いたします」といった、より簡潔な表現を適宜使用することをお勧めいたします。
「働かせていただく」に関する理解と実践のまとめ
- 「働かせていただく」は相手の許可と自身の恩恵がある場合に正しい表現である
- 「させていただく」は働くことを許可され、恩恵を受ける場面で使う
- 過剰な丁寧さや回りくどい表現に注意が必要である
- 二重敬語にならないよう、正しい使い分けを意識する
- 「させていただく」の代替表現を習得すると自然な言い回しになる
- 就職や転職の面接で「働かせていただく」はよく用いられる
- 状況によっては「働かせていただく」が不適切な場合もある
- 「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語である
- 「こちらで働かせていただくことになりました」は入社の挨拶で適切である
- 「働きたい」を伝える際に「働かせていただきたい」は問題ない表現である
- 「いたします」や「~しました」でも十分に丁寧な印象を与えられる
- メールやあいさつ文での適切な敬語表現が重要である
- 文化庁の「敬語の指針」を参考にすると理解が深まる
- 正しい敬語を使えないとビジネスシーンで悪い印象を与える可能性がある
- 頻繁な使用は避け、簡潔な表現を心がける